今回お話を伺ったのは明神水産株式会社 本社営業部の富岡健太さんです。明神水産(株)は高知県の土佐湾を望む幡多郡黒潮町(旧の佐賀町)にあります。高知市から西へ約90kmの距離にあり、車でも2時間ほどかかる所にあります。明神水産(株)は鰹の一本釣り漁船が有名です。また、高知の名物でもある鰹のたたきの加工製品『藁(わら)焼き鰹たたき』が有名で、地元のCMでも『漁師が釣って!漁師が焼いた!』というキャッチフレーズでなじみがあります。
現在では自社で漁船を4隻もっておりまして、さらに契約している冷凍一本釣り漁船が2隻あるそうです。その内、自社の4隻で釣られた鰹はその量の100%を生の鰹として千葉県の勝浦や宮城県の気仙沼に水揚げするそうです。と、すると『たたき』にする鰹はどこから仕入れるのか?!なんですが、それはというと、契約している2隻の船で釣り上げられた鰹を仕入れるか、または市場に水揚げされた『たたき』にすると調度いいサイズの上等な鰹を仕入れているのだそうです。仕入れられた鰹は焼津で冷凍保管され、その後、節状にさばかれた物をこちらの工場で製品へと加工するのだそうです。
お話をしてくださった富岡さんは、現在ここ高知県にある本社の営業部に所属しておりますが県外の出身だそうで、たまたま大学が高知だったことから、学生時代に高知の川や海など今にのこるきれいな自然にふれ感動し、もともと魚や水産関係に興味があったこともあり、自然の多いこの土地の会社へ就職を希望したことがきっかけで今に至っているということでした。「魚が大好きなんです。」と本当に楽しそうにお話をしてくださいましたが、実は『藁焼き鰹たたき』にはなかなかの苦労話があるようです。
佐賀明神丸 進水!
昔から漁師の家では鰹を藁(わら)で焼いてたたきしにして食べていました。明神水産(株)でも鰹を釣るだけではなく、漁師の食べる本当に美味しい鰹のたたきを作って販売していこう!と昭和61年に水産加工物販売をはじめました。水産加工を始めた頃は、完全に手作業で加工をしていたのですが、量産することも考えて、加工用の工場を平成3年に建設しました。工場内では加工作業が機械化されましたが、昔ながらの漁師の味にこだわり、鰹を焼く工程は、現在も変わらず『藁(わら)』を使って作っています。
鰹たたきは『藁焼き』が一番!でも藁(わら)が無い!?
昔は、藁は近所の農家から簡単にもらうことができましたので、漁師の家庭でももらってきては門先などでそれを焚いて、鰹をたたきにして調理されていたものです。ところが近年になると稲刈りをする農業機械「コンバイン」を導入する農家が増えました。もちろん農家にとっては作業効率も上がります。稲の刈り取りと同時に脱穀と、手狩りの際に処分に困っていた藁を裁断する機能がついているためそのまま田へまき散らすので、次に田を耕す時にも邪魔になりません。また高齢化のすすむ農家にとっては必需品ともいえます。そのため、そのコンバインで刈った稲藁は、1本1本が細かく裁断されているので、裁断されていない藁を燃やした時のような炎を出すことができません。また、中国などから仕入れることもできるのですが、農薬の心配や輸入の際にコンテナの中で押しつぶされて、藁の特性である筒状の空洞がなくなってしまうなどの理由で、まったく利用できるものではありません。そういうことから藁の仕入れは高知県産のものにこだわっております。昔は近辺の幡多地区だけで年間の使用量を確保できていたのですが、現在では場所を高知県内全域の山の奥地まで広げ回収に行っております。また昔は無料でもらっていたものを現在ではお金と人手をかけて仕入れており、藁の仕入れにことのほか奮闘しております。できるだけ事前に農家には手狩りをしてもらえるように依頼をしておくのですが、その作業も大変な労働であり後継者不足なども加わって辞めていかれる農家も少なくありません。そんな中でも藁をとっておいてくださる所へは、秋の収穫の時期になると、社員が多数そろって回収に伺います。更に苦労なことに、そもそも手狩りをしてくれるような田は機械の入れないような場所に限られつつあり、その回収場所に行ってもトラックなどが入れないという場所も多く、ほんとうに人力で運搬を行っております。そして持ち帰っても、湿気ていると使い物にならないので、自社で乾かして1年分の藁(15,000~20,000束)を小屋に確保してあります。1年分を保管していても翌年は翌年で、台風などの天災があると収穫できないこともあるので、藁の確保には本当に苦労をしております。しかし、この様な苦労をしても『藁焼き』にこだわるのは美味しく仕上げるためのこだわりなのです。全国に鰹たたき加工食品を作っている会社はたくさんありますが、当社の製品はちょっと他では真似の出来ない「たたき」だと自負しております。
広大すぎる海原へみんなで挑む
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では、どうやって探しているのかというと船の上では双眼鏡をつかって魚群を追う鳥を探します。しかしそれで見つかる範囲は狭いもので、そんなものでは簡単には見つけることはできません。もし見つけても、鰹のたどった回遊ルートによってはその魚群が良い餌にありつけていない場合、鰹自体に脂ののりが良くないということもあります。そこで、船頭たちは脂ののった良い魚群に会うため、実は、あちらこちらへ散らばっている漁船同士と連絡を取り合い、お互いに情報交換をしてなんとか見つけ出しているのです。
当社で製品にするためには、もし自分達の船で漁獲がなかった場合も、どの船が上質な鰹を水揚げしたという情報をもらってその市場へ仕入れにいくという徹底をしております。市場では、値段だけを見て仕入れるのではなく、そんな漁師達の情報を入手しているので、本当に良い鰹を仕入れることができるのです。そんな鰹は、通常たいていが高値になるのですが、次またいつ最適なサイズの上質な鰹が仕入れられるかわからないということもあって、仕入れの担当者は少々高くても一番良いものを仕入れてきます。といっても翌日、大量で値下がりして安く仕入れることができた!なんてこともあるので仕入れ担当者はいつも頭を悩ましているんですけどね。全体的な漁獲量が減っている中、当社ではおかげさまで鰹の確保はずっとできております。
安心・安全の『品質管理室』を完備
現在は衛生管理や食の安全基準をクリアしていることがあたりまえとなって、それが出来ていない製造や販売店は、販売先に取引を取り消されることも普通になっています。当社がお取り引きいただいている生協様も品質管理についてはかなり厳重なチェックがございますので、全国にお取り引きのある生協様がそれぞれ入れ替わり立ち代り、当社の業務内容を点検にこられます。また、当社の製品は、どこでどのように漁獲されて、いつ加工されたものか事細かく管理しておりますので、あってはなりませんが万が一にも何かあった場合は直ぐに対策の取れる管理体制が構築されております。
手抜きしないこと!
当社の鰹たたきのセットには自家製のタレをつけています。このタレはこちら地元の漁師の家庭で昔から一番『藁焼き鰹たたき』に合うとされたレシピを変わらず同じ配合で調味したタレです。藁の香をそこなうことなく、より一層美味しく召し上がっていただくための必需品でもあります。このタレも評判が良くて、時にはそのタレだけを販売してほしいという方もいらっしゃるほどです。
ホームページからもお買物していただけます!
本当に美味しい鰹のたたきなんです!当社で仕入れる鰹は、7月~9月にかけて三陸沖で漁獲される脂ののったいわゆる戻り鰹です。1年間販売する量をその次期に確保し、冷凍保管してありますので、いつでも美味しい戻り鰹のたたきをお召し上がりいただけます。戻り鰹というだけで、それだけでも美味しいにきまっているのですが、それにも輪をかけて、高知の貴重な藁をつかった自然の味と豪快な土佐のかおりをぜひお楽しみください。
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